宿泊者名簿はエクセルで管理できる?紙・エクセル・システムを比較
結論から言うと、宿泊者名簿は紙でもエクセルでも作成・保存できます。 法律で決められた統一様式はなく、必要な記載事項がそろっていて、求められたときにすぐ提示できれば問題ありません。ただし、管理方法によって手間とリスクは大きく変わります。
- 宿泊者名簿に 決まった様式はない。紙・エクセル・システムのどれでもよい
- 電子データで保存するなら、すぐに画面表示・印刷できる状態 にしておく
- エクセルは手軽な一方、転記ミス・ファイルの紛失・パスポート情報の管理 が課題になりやすい
- 予約数・施設数が増えてきたら、ゲスト自身が入力する仕組み への切り替えを検討する
この記事では、エクセルで名簿を作る場合のポイントと、紙・エクセル・名簿管理システムの違いを整理します。
宿泊者名簿は電子データで保存してよい
旅館業法・住宅宿泊事業法(民泊新法)のどちらでも、宿泊者名簿の 様式は定められていません。紙の台帳でも、エクセルやスプレッドシートでも、専用システムのデータでも構いません。
電子データで作成・保存する場合に気をつけたいのは、次の2点です。
- 行政(保健所・自治体)から求められたときに、すぐに画面に表示したり印刷したりできる こと
- 作成の日から 3年間 保存できること
「パソコンが壊れて名簿が開けない」「担当者しかファイルの場所を知らない」といった状態では、すぐに提示できるとは言えません。バックアップを含めて、いつでも取り出せる保存方法にしておくことが前提です。
記載事項や保存期間など、名簿の基本ルールは宿泊者名簿の書き方完全ガイドで詳しく解説しています。
エクセル名簿に入れるべき項目
エクセルで名簿を作るなら、まずは列の設計から始めましょう。法令で求められる記載事項をもとにすると、最低限次の列が必要です。
| 列 | 記載内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 宿泊日 | チェックイン日・チェックアウト日 | 定期報告の宿泊日数の根拠になる |
| 氏名 | 宿泊者全員の氏名 | 代表者だけでなく同行者・子どもも |
| 住所 | 宿泊者の住所 | |
| 職業 | 宿泊者の職業 | 会社員・自営業など大まかな区分でよい |
| 連絡先 | 電話番号・メールアドレスなど | 令和5年の旅館業法関連の改正で記載が求められるようになった |
| 国籍 | 宿泊者の国籍 | 国内に住所のない外国人は必須。定期報告の国籍別内訳にも使う |
| 旅券番号 | パスポート番号 | 国内に住所のない外国人のみ |
記載事項は施設の種類(旅館業か住宅宿泊事業か)や法令の改正によって変わることがあるため、最新の内容は届出先の自治体・保健所で確認してください。
運用上は、これに加えて 予約番号・予約サイト名・人数・本人確認の実施状況 などの列を用意しておくと、後から照合しやすくなります。
1行 = 宿泊者1人 にするのがおすすめです。1行に1予約(代表者のみ)を書く形にしてしまうと、同行者の情報が抜けやすく、国籍別の人数を集計するときにも手間がかかります。
紙・エクセル・システムの比較
それぞれの管理方法には、次のような特徴があります。
| 紙の台帳 | エクセル | 名簿管理システム | |
|---|---|---|---|
| 導入の手軽さ | ◎ すぐ始められる | ◎ 無料〜手持ちのソフトで可 | ○ 登録・初期設定が必要 |
| 費用 | 印刷・保管コスト | ほぼ無料 | 月額費用がかかる |
| 記入する人 | ゲストまたは運営者 | 運営者が転記 | ゲスト自身が入力 |
| 転記ミス | 判読しにくい字が残る | 手入力のミスが起きやすい | 起きにくい |
| 外国人ゲストへの対応 | 多言語の用紙を用意する必要 | 運営者がパスポートから転記 | 多言語の入力画面で対応 |
| パスポートの写しの管理 | 紙のコピーを施錠保管 | 画像ファイルを別途管理 | 名簿とひもづけて保管 |
| 定期報告の集計 | 手作業で数える | 関数で集計できるが手間 | 自動で集計できる |
| 3年間の保存 | 保管スペースが必要 | バックアップが必要 | クラウドに保存 |
施設が1つで予約も月に数件程度であれば、エクセルでも十分に回ります。一方で、予約が増えるほど 転記と集計の手間 が積み重なっていきます。
エクセル管理でつまずきやすいポイント
エクセルの名簿は手軽な反面、運用を続けるうちに次のような問題が起きやすくなります。
予約サイトやメッセージからの転記が負担になる
ゲストの氏名・住所・国籍などを、予約サイトの管理画面やメッセージのやり取りから 毎回コピーして貼り付ける ことになります。同行者の情報は予約サイトに登録されていないことも多く、ゲストに改めて聞いて、返信を待って、転記する、という作業が予約ごとに発生します。
ファイルが増えて「どれが最新か」わからなくなる
「名簿_2026.xlsx」「名簿_2026_最新.xlsx」のようにファイルが分かれたり、共同運営者とメールで送り合ったりしているうちに、どのファイルが正しいのか がわからなくなりがちです。3年間の保存義務を考えると、ファイルの散逸は大きなリスクです。
パスポート情報の安全管理が難しい
エクセルのファイルには、氏名・住所・旅券番号といった個人情報がまとまって入っています。パソコンの紛失や メールでの誤送信 があれば、多数の宿泊者の情報が一度に流出しかねません。パスポートの写しの扱いについては外国人宿泊者の本人確認|パスポートコピーの義務と保管方法もあわせて確認してください。
エクセルで管理を続ける場合は、少なくとも次の対策をとっておきましょう。
- ファイルに パスワードを設定 し、メールでの送付は避ける
- 保存場所を 1か所に決め、定期的にバックアップをとる
- パスポートの写しは名簿ファイルとは 別の、アクセスを限定した場所 に保管する
- 保存期間(3年間)を過ぎたデータは 計画的に削除 する
定期報告の集計に時間がかかる
民泊の定期報告では、2か月ごとに宿泊日数・宿泊者数・延べ宿泊者数・国籍別の内訳を報告します。エクセルでも関数やピボットテーブルで集計できますが、入力の揺れ(国籍の表記ゆれなど)があると正しく数えられません。報告内容の詳細は民泊の定期報告とは?やり方・期限を解説で解説しています。
管理方法を見直す目安
次のような状態になってきたら、エクセルからの切り替えを検討するタイミングです。
- 予約が 月に10件以上 あり、転記に毎回時間がとられている
- 外国人ゲスト が多く、パスポート情報の取り扱いに不安がある
- 複数の施設 を運営している、または共同運営者と名簿を共有している
- 偶数月の 定期報告の集計 が毎回の負担になっている
- セルフチェックインで、ゲストと対面せずに情報を集めたい
いずれも、「運営者が転記する」という前提そのものが負担の原因になっています。ゲスト自身にチェックイン前に入力してもらう仕組みに変えると、転記・確認・集計の作業をまとめて減らせます。
名簿管理システムを選ぶときのチェックポイント
システムを比較するときは、次の点を確認しておくと失敗しにくくなります。
- ゲスト自身が入力できるか(アプリのインストールや会員登録が不要か)
- 外国人ゲスト向けに 多言語で入力 できるか
- パスポートの写し を、アクセスを限定して保管できるか
- 名簿を CSVやエクセルで出力 できるか(行政への提示や移行に備えて)
- 定期報告の集計 に対応しているか
- 使っている 予約管理システム(PMS)と連携 できるか
- 施設数や予約数が増えたときの 料金体系
まずはエクセルで始め、予約数や施設数が増えてきた段階で切り替える、という進め方でも問題ありません。大切なのは、どの方法でも 記載事項がそろった名簿を、3年間いつでも提示できる状態で保存する ことです。
※ 本記事は2026年10月時点の一般的な情報をもとにしています。名簿の保存方法の運用は自治体によって異なる場合があるため、詳しくは届出先の自治体・保健所に確認してください。