外国人宿泊者の本人確認|パスポートコピーの義務と保管方法
結論から言うと、「日本国内に住所を持たない外国人宿泊者」については、国籍・旅券番号を宿泊者名簿に記載することが法令で義務付けられており、あわせてパスポートの写しを保管する運用が国の通知・ガイドラインで求められています。 ポイントは次のとおりです。
- 対象は国内に住所のない外国人。日本に住んでいる外国籍の方は対象外
- 名簿への国籍・旅券番号の記載は法令上の義務
- 旅券の呈示を求め、写しを保管する運用が国の通知・ガイドラインで示されている
- 写しは機微な個人情報。保管期間と安全管理までセットで設計する
「どこまでが法律の義務で、どこからが通知に基づく運用なのか」も含めて、この記事で整理します。
パスポートコピーは「義務」なのか
まず、法令と通知・ガイドラインの関係を整理しておきましょう。レイヤーが2つあります。
法令上の義務:名簿への国籍・旅券番号の記載
旅館業法・住宅宿泊事業法(民泊新法)のいずれでも、日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、宿泊者名簿に国籍と旅券(パスポート)番号を記載することが施行規則で定められています。これは法令上の義務です。
宿泊者名簿の記載事項全般については、宿泊者名簿の書き方の記事で詳しく解説しています。
通知・ガイドラインに基づく運用:旅券の呈示と写しの保管
これに加えて、国(厚生労働省・観光庁)の通知やガイドラインでは、対象となる外国人宿泊者に旅券の呈示を求め、その写しを宿泊者名簿とともに保管することが求められています。テロ対策・治安維持の観点から示されているもので、自治体の条例や指導でも同様の運用が求められるのが一般的です。
つまり「パスポートコピーの保管」は、条文に直接書かれた義務というより国の通知・ガイドラインに基づいて実務上求められる対応ですが、保健所の立入調査や自治体の指導では当然に確認されるポイントであり、実務上は「やらない」という選択肢はないと考えるべきです。なお、通知・ガイドラインの内容や自治体ごとの運用は見直されることがあるため、最新の取り扱いは所管の保健所・自治体で確認してください。
本人確認が必要な宿泊者の範囲
旅券の確認・写しの保管が求められるのは、日本国内に住所を有しない外国人宿泊者です。
- 海外から観光・出張で訪れた外国人 → 対象
- 日本に住民票があり居住している外国籍の方 → 対象外(基本の名簿記載のみでよい)
「外国人かどうか」ではなく「国内に住所があるかどうか」が基準である点に注意してください。日本に住んでいる外国籍の方に一律でパスポートの提出を求める必要はありません。
また、対象となる場合は宿泊者全員分の確認が必要です。グループの代表者だけ確認して同行者は省略する、という運用は名簿の記載漏れ(国籍・旅券番号の空欄)につながります。
本人確認のやり方
対面チェックインの場合
- チェックイン時に旅券の呈示を求める
- 顔写真ページで、目の前の本人と相違ないか確認する
- 国籍・旅券番号を宿泊者名簿に記載する
- 旅券の写し(コピーまたは撮影画像)を取得し、名簿とともに保管する
セルフチェックイン・無人運営の場合
家主不在型の民泊などでは、ICT(情報通信技術)を活用した本人確認が認められています。一般的な運用は次のとおりです。
- 事前にゲスト自身にパスポート画像をアップロードしてもらう
- チェックイン時にビデオ通話などで、画像と本人が一致することを対面と同等に確認する
- 施設内に設置したタブレット等で、入室時に確認を行う方法もある
ポイントは「画像を集めるだけ」では足りず、その画像の人物が実際の宿泊者本人であることを確認するプロセスまで求められることです。具体的にどのような方法が認められるかは自治体により運用差があるため、届出先・所管保健所に確認しておくと安心です。
呈示を断られたときの対応
旅券の呈示を求めても協力が得られない場合の対応として、国の通知では、警察への連絡などの対応が示されています。トラブルを避けるためにも、次の準備をしておきましょう。
- 予約時・予約確定メールの段階で「法令等に基づき旅券の確認が必要」なことを伝えておく
- ハウスルールや事前案内に、英語など多言語で本人確認の手順を明記する
- それでも拒否された場合の連絡先(最寄りの警察署・所管保健所)を控えておく
「チェックイン時に初めて知らされた」という状況が、いちばん揉めやすいパターンです。事前告知を徹底するだけで、拒否されるケースはほとんどなくなります。
パスポートの写しの保管方法
保管期間
旅券の写しは宿泊者名簿とともに保管するものとされているため、名簿の保存期間である3年間にあわせて管理するのが基本です。保存期間を過ぎたものは、放置せずルールに沿って確実に削除・廃棄しましょう。
避けたい保管方法
旅券の写しは、氏名・顔写真・生年月日・旅券番号がそろった機微な個人情報です。次のような状態は漏えい事故のもとになります。
- メールやチャットアプリで受け取ったまま放置する
- 誰でもアクセスできる共有フォルダやUSBメモリに保存する
- 個人のスマートフォンのカメラロールに残しておく
- 退職したスタッフのアカウントからも見られる状態になっている
望ましい保管方法
- アクセス制御された非公開ストレージに保存し、閲覧できる人を限定する
- 閲覧は必要なときだけ、できれば期限付きのURLなどで行える仕組みにする
- 受け取りに使ったメール・チャットからは削除し、保管場所を一元化する
- 保存期間が満了したデータを自動または定期的に削除する運用にする
万一漏えいすれば、個人情報保護法上の対応(本人通知・委員会への報告など)が必要になる場合があり、施設の信頼にも直結します。「集め方」だけでなく「保管と削除」まで含めて設計することが重要です。
本人確認をスムーズにする運用の工夫
外国人ゲストの本人確認は、やり方次第で「負担の重い作業」にも「数分で終わる手続き」にもなります。スムーズに運用するコツは次のとおりです。
- 予約確定の時点で、本人確認が法令等に基づく手続きであることを多言語で案内する
- ゲストにアプリのインストールや会員登録を求めない提出方法を用意する
- 提出された情報・画像が、そのまま宿泊者名簿と紐づいて保存される仕組みにする
宿泊者名簿の管理システムを使えば、予約ごとに発行される専用URLからゲスト自身が国籍・旅券番号の入力とパスポート画像のアップロードを行え、運営者は本人確認の状況をひと目で把握できます。写しはアクセス制御されたストレージに保管され、保存期間の管理まで自動化できるため、「集める・確認する・安全に保管する・期限が来たら消す」という一連の流れを仕組みで回せるようになります。