宿泊者名簿の書き方完全ガイド|記載事項・保存期間・罰則まで
結論から言うと、宿泊者名簿は「宿泊者全員分」を「法定の記載事項どおり」に作成し、「3年間」保存する必要があります。 具体的には次のとおりです。
- 記載事項の基本は 氏名・住所・職業・宿泊日(法改正により連絡先の記載も求められるようになっています)
- 日本国内に住所を持たない外国人宿泊者は、追加で 国籍・旅券(パスポート)番号 が必要
- 保存期間は 3年間。行政から求められたら提出できる状態にしておく
- 名簿の不備には 罰則 があり、民泊では業務改善命令などの行政処分につながるおそれもある
この記事では、民泊・小規模宿泊施設の運営者向けに、宿泊者名簿の書き方・保存・罰則のポイントを順に解説します。
宿泊者名簿とは?なぜ義務なのか
宿泊者名簿とは、施設に宿泊したすべての人の氏名や住所などを記録する帳簿のことです。「宿帳(やどちょう)」と呼ばれることもあります。
作成・備え付けが義務付けられている根拠は、営業形態によって異なります。
- 旅館・ホテル・簡易宿所(旅館業法の許可営業)── 旅館業法第6条
- 届出制の民泊(住宅宿泊事業)── 住宅宿泊事業法(民泊新法)第8条
どちらの法律でも、営業者・事業者は宿泊者名簿を備え付け、行政(都道府県知事等)から求められたときに提出できるようにしておくことが求められています。
この制度の目的は、感染症が発生した際に宿泊者へ連絡を取れるようにすることや、犯罪・テロの防止です。「形式的な書類仕事」ではなく、万一のときに実際に使われる記録だという前提で、正確に作成することが大切です。
宿泊者名簿の記載事項
基本の記載事項
宿泊者名簿に記載する基本の項目は次のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 氏名 | 本名をフルネームで。通称やニックネームは不可 |
| 住所 | 都道府県から番地まで正確に |
| 連絡先 | 電話番号など、連絡が取れるもの |
| 職業 | 会社員、自営業など大まかな区分でよい |
| 宿泊日 | チェックイン・チェックアウトの日付 |
なお、名簿の記載事項は近年の法令・制度の見直しで変更されることがあります(例:令和5年の旅館業法関連の改正で連絡先の記載が求められるようになった一方、項目の簡素化に向けた見直しの議論もあります)。最新の記載事項・様式は、営業地を所管する保健所や自治体の案内で必ず確認してください。
外国人宿泊者の追加項目
日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、上記に加えて次の2項目の記載が必要です。
- 国籍
- 旅券(パスポート)番号
あわせて、旅券の呈示を求めて写しを保管する運用が国の通知・ガイドラインで示されています。詳しくは外国人宿泊者の本人確認の記事で解説しています。
なお、日本に住民票がある外国籍の方(在留資格を持って国内に居住している方)は「国内に住所を有する」ため、基本の記載事項のみで構いません。
「宿泊者全員分」が必要
見落とされがちですが、名簿は予約代表者だけでなく宿泊者全員分が必要です。家族旅行やグループ利用でも、同行者を含む全員の情報を記録します。子どもも宿泊者である以上、対象になります。
代表者の情報しか取得していない運用は、名簿の不備にあたるおそれがあります。予約時または チェックイン前に、全員分の情報を集められる仕組みを整えておきましょう。
宿泊者名簿の書き方と実務の流れ
実務では、次の流れで名簿を作成するのが一般的です。
- 予約時:代表者の情報と宿泊人数を把握する
- チェックイン前〜チェックイン時:宿泊者全員分の氏名・住所・連絡先などを取得する
- 外国人宿泊者:旅券の呈示を求め、国籍・旅券番号を記載し、写しを保管する
- チェックアウト後:記載内容に漏れがないか確認し、名簿として保存する
よくある不備
保健所の立入調査などで指摘されやすいのは、次のようなケースです。
- 代表者分しか記録していない(同行者の記載漏れ)
- 外国人宿泊者の国籍・旅券番号が空欄
- 住所が「東京都」など途中までしか書かれていない
- 名簿はあるが、過去分がどこにあるか分からず提出できない
「項目がすべて埋まっているか」「あとから探して提出できるか」の2点を意識すると、不備の大半は防げます。
様式は自由?紙とデータどちらでもよい?
宿泊者名簿に法定の統一様式はなく、必要な記載事項がそろっていれば、紙でも電子データでも構いません。自治体によっては参考様式を配布しているので、それを使うのも一つの方法です。
ただし電子データで管理する場合は、行政から求められたときにすぐに表示・印刷できる状態にしておく必要があります。個人のスマートフォンの中やメールの受信箱に散らばっている状態では、「備え付けている」とは言えません。
また、名簿は個人情報のかたまりです。個人情報保護法に基づく安全管理措置として、アクセスできる人の限定、保管場所・データのアクセス制御、不要になった情報の確実な削除までを含めて運用を設計しましょう。
保存期間は3年間
宿泊者名簿は 3年間の保存 が求められています(旅館業・住宅宿泊事業とも)。民泊新法では「作成の日から3年間」と定められています。
実務上のポイントは次のとおりです。
- 3年の間に行政から提出を求められる可能性があるため、年月や施設ごとに整理して検索できる状態にしておく
- 紙の場合は紛失・劣化のリスクがあるため、保管場所とファイリングのルールを決める
- 電子の場合はバックアップと、誤削除・漏えいを防ぐアクセス管理を行う
- 保存期間を過ぎた名簿・本人確認書類は、放置せずルールを決めて削除・廃棄する
「ずっと取っておく」のも個人情報保護の観点ではリスクです。保存期間が満了したものを定期的に削除する運用までセットで考えましょう。
名簿の不備に対する罰則
宿泊者名簿の義務に違反した場合、罰則の対象になり得ます。
- 旅館業:名簿を備え付けない、虚偽の記載をする、提出を拒むといった行為には、拘留または科料の罰則が定められています
- 民泊(住宅宿泊事業):名簿関連の義務違反は罰金等の罰則の対象になり得るほか、業務改善命令などの行政処分や、悪質な場合は事業継続そのものに影響するおそれがあります
罰則の適用以前に、立入調査で不備を指摘されれば改善対応に追われ、近隣や自治体からの信頼にも関わります。条文・罰則の詳細は改正されることがあるため、最新の情報は厚生労働省・観光庁や所管の保健所で確認してください。
名簿管理を効率化する方法
ここまで見てきたとおり、宿泊者名簿は「全員分を」「正確に」「3年間」管理する必要があり、紙やエクセルでの手作業運用には限界があります。とくに次の負担が大きくなりがちです。
- 同行者を含む全員分の情報収集と転記
- 外国人宿泊者の国籍・旅券番号の確認と、旅券の写しの安全な保管
- 3年間の保存と、期間満了後の削除管理
- 定期報告(民泊の場合)に向けた集計
宿泊者名簿の管理システムを使えば、予約ごとに発行される専用URLからゲスト自身が情報を入力でき、法令の記載事項に沿った名簿の作成・保存期間の管理・名簿の出力までを自動化できます。手作業の転記ミスや記載漏れを防ぎながら、チェックイン業務そのものも軽くなります。